THE PERSON
-登場人物の紹介

第2回目のお客様


ジャン・ルソー
株式会社

代表取締役社長


ピエール トムラン様

Pierre Thomelin
1978年パリ生まれ

 

聞き手


株式会社石国

代表取締役 社長

東京美装商工業協同組合 理事長


石田国久

Ishida Kunihisa
1966年東京生まれ

まえがき

本日お相手をして頂くのは、パリと東京にアトリエを持たれ革の加工処理から染色、完成品に至るまで製造プロセスを全て自社でコントロールしているマニュファクチュール企業である「ジャン・ルソー株式会社」の代表取締役でありますピエール トムラン様です。
トムラン様は、自社のブランドに責任と誇りを持たれ、日本のマーケットにその神髄を広めるために日々活躍されています。

その神髄とは何か―

東京にアトリエを開いたのは何故か―

ジャン・ルソーブランドの今後の戦略とは―

聞きたい話が沢山あり非常に楽しみです。


はじめに

(石田)本日はお時間を頂戴いたしまして誠にありがとうございます。時計ベルトの世界をより多くの人々に知って頂きたく、お話をお伺いできればと思っております。
よろしくお願い致します。

(トムラン)よろしくお願いします。


本国のジャン・ルソーについて ≪情熱を持ったマニュファクチュール≫

(石田)ジャン・ルソー発祥の地である「ブザンソン」という町はどの様な街なのか教えて下さい。

(トムラン)フランスの古い町で非常に魅力的な街です。フランスの東側に位置して、精密機器産業と時計産業が有名です。スイスにも近い町で、私もよく車でブザンソンからスイスまで行っていました。日本の時計メーカーも時計の工場を持っていた時期がありました。

(石田)素敵な街なのでしょうね。是非一度行ってみたいですね。現在、ベルト職人は何名くらいいるのですか。

(トムラン)フランスには50名を超える職人がいます。日本には今は7名です。

(石田)日本での職人の数が増えましたね。

(トムラン)お客様に良いサービスを提供するためにはまだまだ足りません。

(石田)本国のボス(社長)はどの様な方なのですか。

(トムラン)ジャックボルティエと言うフランス人です。金融業界から移られた方でLVMHなどでの勤務経験がある方です。ジャン・ルソーに興味を持つようになり、ジャン・ルソー社の社長に就任後高級路線へと転換し、マニュファクチュールにこだわりを持ってハンガリー工場の建設やパリのアトリエの開設等を行いました。そして、この日本のアトリエも彼の思想によって開設されました。時計ベルトに対して非常に情熱を持った方です。


ピエール トムランさんについて ≪日本との縁結びはアニメ≫

(石田)ジャン・ルソー株式会社の代表取締役に就かれる前は何をされていたのですか。

(トムラン)フランスの大学時代に日本語の勉強をし、その後ビジネススクールで学んだあと日系の自動車会社に東京で就職しました。その後フランスの建設及び自動車部品会社の営業に転職し、その経験を活かしてさらに楽しい仕事がしたいと思いビデオプロダクション会社に移りました。コンピューターグラフィックスの営業としてレコード会社やゲーム会社の方たちと一緒に仕事をしました。仕事は楽しかったのですが、暮らすのは大変でした。その内にジャン・ルソーの東京進出の話を聞きつけ、ジャックボルティエに直接電話をして就職しました。ちょうど日本から何名かフランスに職人の研修として来ている時期でした。その後副社長になり、社長になりました。

(石田)学生の時、日本語を学ばれたとのことでしたが、色々なランゲージがある中で何故日本語を選ばれたのですか。

(トムラン)よくこの質問を受けるのですが、少し恥ずかしいのですが、10歳の頃にフランスで見た日本のアニメーションに惹かれて、日本に興味を持つようになりました。

(石田)ドラゴンボールとかですか。

(トムラン)日本の街並みが見られるアニメが好きだったのでシティーハンターが好きでした。最近はあまり見ないのですが80年代のアニメは好きです。15歳から学校で日本語を学び始めて、大学時代はよく日本に来ていました。お金があまりない頃でしたのでボランティアなどをしながら来日していました。

(石田)日本を選んでいただいて「ありがとうございます」という気持ちになりますね。私も欧州ではフランスが好きです。食事や文化がとても馴染みやすく新婚旅行もフランスでした。

(トムラン)トュールースには行かれましたか。

(石田)はい、新婚旅行の時ではないのですが、トュールースには1998年フランスワールドカップの時に日本対アルゼンチン戦を観戦するために行きました。きれいな街並みとフォアグラが美味しかったのを覚えています。

(トムラン)私はトュールースの街が非常に好きで、それでビジネススクールはトュールースのスクールに決めたのです。

(石田)そうですか。トムランさんは仕事以外の時は何をされているのですか。趣味とか。

(トムラン)写真が好きです。あとは映画鑑賞。ビデオ観賞。それとお酒ですかね。

(石田)そうですか。私も食べるのとお酒は大好きですので是非今度ご一緒しましょう。


時計ベルト市場について ≪感性はフランス人に似ている国 日本≫

(石田)フランスの方から見た日本の時計ベルトマーケットはどの様に感じていらっしゃいますか。

(トムラン)日本のお客様は時計が好きでおしゃれではあるけれど、直ぐに時計ベルトを替えようと思う人は少ないと思います。それは、時計ベルトを替えると楽しいということを知っている人が少ないからだと思います。もし、時計ベルトを替える楽しみを多くの人に知ってもらったら、ハマると思います。何故なら、日本のお客様はファッションセンスもあるし、良いものを見極める目も持っているし、何よりファッションについてよく考えている国民だと思うからです。こういったところはフランス人とよく似ていると思います。なかなかベルトを替える楽しみを知ってもらうのは難しいけれど。

(石田)そうなのですよね。そのベルトを替える楽しみを知ってもらう一助になればとこの「ウォッチェルト談義」を企画実行しているところではあるのですが中々浸透していかないですね。要因に何か心当たりはありますか。

(トムラン)お客様は、時計を買ったところでしかベルトも替えられないと思っている人が多いのも事実です。私たちはOEMとして最高級時計メーカーもお客様ですのでどちらが良いという話ではないのですが、もっとベルトを楽しんで頂きたいと思っています。

(石田)時計の販売員さんは時計の説明は非常にうまいのですが、販売の時点で時計ベルトや時計修理の話までされる方はほとんどいません。

(トムラン)時計の販売員さんは時計を売るのが仕事だからしょうがないと思います。でも、私たちのお取引先で非常にベルトを売るのが上手なお取引先とあまり上手でないお取引先があるのも事実です。お客様の「もっと時計を楽しみたい」という要望に応えるという意味でのサービスが非常に大切だと思います。時計を売る時間の何倍もかけて時計ベルトのオーダーを承ることが重要であるという認識を持っているお店が、繁盛するのではないでしょうか。

(石田)トムランさんは日本人の気質をよく理解されているように感じられますが。

(トムラン)先ほどもお話しましたが、フランス人と日本人はある種の感性が似ていると思います。そして、厳しい目を持っていますので、私たちの店に職人を常駐させることや、細かい要望に応えていく姿勢は評価して頂けていると思っています。日本で成功したらどの国に行っても成功すると思っています。それくらい日本人のファッションに対する姿勢は真摯なものがあると思います。

(石田)OEMである純正ベルトとジャン・ルソーブランドの市販ベルトの棲み分けは何か考えていますか。

(トムラン)基本は同じです。アプローチが少し違うと思います。OEMはソリューション事業であり、メーカーサイドの要求にどの様に答えていくかが大事です。ジャン・ルソーブランドはマーケティングでありお客様に楽しんで頂くことが大事です。この両方を大事にしていくことがジャン・ルソー社の存在意義だと思います。


ジャン・ルソーについて ≪「サービス」という考え方を持っているメーカーである≫

(石田)それではいよいよジャン・ルソーブランドについて聞いていきたいと思います。まず初めにジャン・ルソーの最大の特徴はどこありますか。

(トムラン)「サービス」という考え方を持っているメーカーであるということが最大の特徴です。それは、ひとつにはオーダーの楽しさを伝えたいと思っているところ。もう一つにはマニュファクチュールであるということです。これは、日本に来ている他のフランスの時計ベルトブランドにはない特徴です。自分の所で革を染めている時計ベルトブランドは当社だけだと思います。自分の好きな色をシーズンに合わせて染めることができるということです。これがファッションのトレンドに答えることのできる大きな要因だと考えており強みと思っています。

(石田)オーダーの楽しさを伝えたいという考え方は非常に共感を持ちます。私どももポニーオーダーメイドシステムというオーダーを受けてから非常に短い時間で製品にする体制を整えています。そして、世界に一本という価値を理解して頂ける多くのお客様にご愛用頂いております。


(石田)さて、マニュファクチュールであることと簡単に言いますが、その大変さは同じベルトを作る立場からすると大変なことだと思いますが。

(トムラン)製造の大変さは直接指揮をしているわけではないので詳しく話せませんが、ジャックボルティエがジャン・ルソーに興味を持ったのは正にこのマニュファクチュールとして革の加工から染色技術まで持っていたことにあると聞いています。

(石田)日本の皮革産業は、輸入、革加工、染色と分業制になっていて、さらに製品の製造まで手掛ける会社は皆無かと思います。商品のトレーサビリティという面においても有効ですね。


(石田)続いてアトリエについて聞かせてください。工房兼店舗を日本国内に作られたということは他の輸入メーカーは何処もしていません。大きな特徴と思うのですが。

(トムラン)これは、お客様の要望をしっかりと聞き、少しでも早くお客様に届けるために必要なことです。私たちは「サービス」という考え方を持ったメーカーですので、お客様に喜んでいただけることは実行していきます。

(石田)東京にアトリエを開くというのはどなたの考えだったのですか。

(トムラン)ジャックボルティエのコンセプトの一つです。彼の中に早い段階から構想があったのだと思います。

(石田)東京をまず選んだのもボルティエさんですか。

(トムラン)ワールドマーケットを考えたとき支社を開設するならアメリカと日本しかないと思っています。実はジャックボルティエも日本が特別に好きで興味を持っていて、それで日本から始めようということになったわけです。対象とするマーケット人口も多いですし、日本で成功すればどこの国でも成功できるという思いもありました。



今後の展開について ≪ベルトと革小物、そして拡大≫

(石田)今後、時計ベルト事業はどの様に進めていかれますか。

(トムラン)もっとお客様に来てもらえるように広げていきたいと思っています。特にお客様を大事にしている時計店にお客様に来て頂く為のツールとして当社の「サービス」を活用して頂けたらと思っています。

(石田)オーダーではない既製品について考えていらっしゃいますか。

(トムラン)オーダーと既製品のセットで考えています。高級ベルトでナンバーワンはジャン・ルソーだと思ってもらうため、まずは既製品を使用して頂き、その良さを感じて頂いてオーダーを承るという展開もあるかと考えています。

(石田)続いて革小物の展開について教えてください。

(トムラン)この分野も広げていきたいと思っています。既に百貨店1店舗で販売を開始しています。そして革小物担当の営業部員としてアレクサンドル ラノスを採用しました。よろしくお願いします。特に百貨店での販売を強化したいと思っています。財布や名刺入れ、スラックス用ベルトなどを展開していきたいと思っています。革小物のオーダーも開始したいと考えています。その他iPadのカバーなどのオーダーにも対応したいと思っています。

(石田)トムランさんの話を聞いていますと勢いを感じますが。

(トムラン)これらを進めるにあたって今のアトリエでは手狭になってきたので6月に並木通りに引越しをします。

(石田)素晴らしいですね。時計ベルトと革小物、それぞれのオーダーを承るには非常に魅力的な場所に移られますね。

(トムラン)今年は、引越しと新しいラインの展開、そして革小物と非常に楽しみです。多くの方に紹介できればうれしいです。そして、不景気を吹っ飛ばせればと思っています。



おわりに

(石田)最後になりますが、まずはジャン・ルソーファンに一言お願いします。

(トムラン)私がジャン・ルソーファンの皆さんにエンゲージメントしたいのは、もっと沢山の色を提供すること、もっと早く作ること、もっと新しいもの、新しいサービスを届けることをいつまでも続けていくことです。その為にも是非銀座のお店に足を運んでいただき、うちのスタッフとうちの職人とどういうものがほしいか、お客様の要望をお聞かせください。また、フェイスブックにも来て頂きコメントをください。楽しみにしています。

(石田)最後の最後ですが石国にエールを頂ければと思います。

(トムラン)石国さんは、時計ベルトの販売ではお客様への商品説明や時計の楽しみ方を伝えられる会社としては日本一だと思います。私どものブランドの説明も丁寧に説明して頂いています。ありがとうございます。これからも一緒によろしくお願いします。

(石田)素敵な言葉を頂きましてありがとうございます。こちらこそ今後ともよろしくお願い致します。そして、共にオーダーメイドの素晴らしさを伝えていきましょう。ありがとうございました。





編集後記

明るくて、チャーミングで、そしてちょっとやんちゃな感じのするフランス人でした。日本語が上手で、非常に日本のことを理解されていて、日本人の多くが魅力を感じる方という印象を受けました。日本に興味を持ったきっかけはアニメと聞かされると日本のアニメってすごいなぁと改めて感じてしまいました。


お話し中「サービス」という言葉をよく使われました。日本人が普段使っている「サービス」という言葉のニュアンスとはちょっと違って、真の意味での「人のために力を尽くすこと」を指していると感じました。ジャン・ルソーの特徴を言いかえると「人のために力を尽くすという考え方を持っている製造会社が作る製品」となると思います。それを実直に実行していると思います。

日本国内にアトリエを開設したのも、納期を縮めよう、お客様から直接話を聞こうと思ったからと言われると何か特別なことではなく当たり前のように思えてきます。


営業マンを増やしたり、店舗をもっと良い場所に移転したりと着々と次の一手を打っていると感じました。

当社へのエールを伺ったとき、冗談で「もっと買ってください」と言ってしまえるところがトムランさんの魅力であり素直な所だと思いました。


日本に初めて工房を開いたフランスの時計ベルトブランド「ジャン・ルソー」と共に、お客様にもっともっと時計を楽しんで頂くために私ももっともっと頑張っていこうと思います。


トムランさん素敵な時間を共有させて頂き、ありがとうございました。6月の新店舗のオープン楽しみにしています。



今後も様々な人に「時計ベルト」をテーマに話を聞きに行こうと思います。是非、ご期待ください。また、私と「時計ベルト」をテーマに話しがしてみたい方がもしいらっしゃいましたら、当ホームページのお問い合わせまでご連絡ください。